連載「日本のディテール」目次
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根継ぎ

根継ぎ

柱は下から腐る。地面に近いから雨や湿気があたりやすいのだろう。こうした柱の元だけを新しい部材に入れ替えることを根継ぎという。
寺社の古い門などを注意深く見ると丁寧な根継ぎをした柱を見かけることがある。
今ではツーバイフォーとやらで、根をつぐべき柱もなくなったが、少し前までは一般の住宅でも柱が傷むと補修したものだ。

根継ぎ


写真は京都の知恩院を訪ねたおりに、ふとしたことから発見した柱である。
石の根継ぎというのは初めて見た。
あまりに大仰な細工なので、根継ぎだが、最初から意図したデザインなのか、事務所に戻って聞いてみようと思ったが、例によって横着を決め込んで、次の機会に尋ねてみることにした。

ものを大切にする。それも傷んだら修理する。直した仕口も意匠のうち。素晴らしい文化だと思う。

authorInoh Ippei  linkLink  comment0  trackback 
category根継ぎ  time17:51

一つの石に宇宙を見る

石

独特の美しさで知られる日本庭園。その美しさの背景には精神性ということがあって、ここが西洋の庭園と大きく異なるところだと思っている。
一つの自然石に宇宙を見たり、大自然を見る。石というのは、それほど味わい深く奥が深い。
庭園には古くから象徴的に使われているが、石は木材と異なり加工が困難であることから、日本の建築材としてはあまり使われていない。最近では技術も道具も、かつて考えられないほど進歩して石を自在に素材として使えるようになっている。

店の床に使われているのは宮城県産の玄昌石だ。
石自体が層をなしており薄くはぐように割ることができる。通常は割ったままの肌合いを残して使われる場合が多いのだが、ここでは敢えて、割れ肌ではなく水磨きをして使っている。磨かれた石肌の墨色が独特の柔らかさをかもしだす。
一枚の大きさも厚く長いものを特別に発注し、通常の石貼りの床とはひと味違う個性を演出している。
石として、どちらかといえば柔らかい方で、時の流れの中で無数の傷がついてゆく。
それが新たな景色となり床としての風合いが完成していくだろう。

ところで、入り口から入ってカウンターの奥に大きな自然石を据えた。この小さな店のシンボルである。最近では、内装などに使われるのは樹脂の石と相場が決まっているから、本物の石だと思わない人のほうが多いかもしれない。

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株式会社古今研究所 代表取締役
稲生一平

アートディレクター、陶芸家
1942年生まれ。大手広告代理店に勤務後に独立。異色のプロデューサーとして活動。
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