連載「モノ語り」目次

ラウンジチェア・アームのモノ語り

«Prev || 1 || Next»

インプレッションとディテールの見事なコントラスト

ラウンジアームのアーム
(写真5)

アームの板の話をしよう。

それもとっておきの話から始めよう。アームの内側、座って体の側は直線に見えるし、実際に使っておられる人たちも気づかない人が多い。そういう自分も購入当初は気がつかなかった。
目を凝らして見ると、あたかも人の体をいたわるように、ごく僅かな曲線になっていることに気づくだろう。
機能からしても、手間からしても、このディテールは意味を持たない。私はジョージ ナカシマの精神性からくるディテールのデザインだろとうと思っている。人柄が見えてくる。

ラウンジアームのアーム
(写真6)

アームの板のデザイン

アームの板は二つと同じモノはない。ラウンジチェア・アームの長い歴史の中では、様々な美しい素材を使った、いわば番外ものも多く作られてきた。
アームの板は外側に少しだけ自然の部分を生かして木どりされている。この素朴な部分を残す一方で、前述の僅かなアールというディテールのハーモニーはただ驚くばかりである。

ラウンジアームのアーム
(写真7)

アームの板と一番端のスピンドルの接合部分を見てみよう。

さあクイズではないが、スピンドルはアームの板を貫通しているのでしょうか、それとも二本のスピンドルで上下から挟んでいるのでしょうか。
答えは、貫通した一本の棒だ。スピンドルの僅かなテーパーを利用して止めて、内側から竹のピンで固定しているのだが、所定の位置で寸分の隙間も無く水平に固定されるようにセットする。いかに技術と精度が必要かおわかりいただけると思う。

アームの板のデザイン2

アームの板が何故このような形にデザインされているだろうか。まず後ろと前の線だが、これは概ね座板の美しい曲線の延長線上にあると言ってよい。(写真3参照)では何故前の線を途中で折り返しているのだろう。
ここにもナカシマの人に対する優しさがあるように思える。座板のカーブに従って延長していくと終端は鋭い鋭角になる。これを避けたデザインだろう。

前へ
次へ

「ラウンジアーム」の商品情報は、桜ショップオンラインにてご覧いただけます。

«Prev || 1 || Next»
株式会社古今研究所 代表取締役
稲生一平

アートディレクター、陶芸家
1942年生まれ。大手広告代理店に勤務後に独立。異色のプロデューサーとして活動。
> 続きを読む