連載「モノ語り」目次

OFUDA-DEN(お札殿)

香筒

筒形に移行

筒形での課題は、香たてだ。前述のとおりキャップに香たてを仕込んだものは、掃除の問題と、木製の場合に木の筒の中に火のついた線香を立てるという不安がつきまとう。さてどうしよう。
香たてを外付けにして、根付のようにひもで香筒に取り付けているものがある。これも一案だが、やはり美しく香筒の中にセットされるに越したことはない。

香筒のプロトタイプ
(写真5)

挽きものの感じをつかむためにまず試作(写真5)、そして検討したのが下の写真6のモデルだ。キャップにもう一つエンドキャップを設けて、その中に香たてを入れるという案だ。この案をリファインしていくことにずいぶん多くの時間を費やした。

香筒のプロトタイプ
(写真6)

本体と蓋のかぶせを検討していく、短すぎると不安定になり、深くとりすぎるとキャップの肉が薄い部分が多くなる。

ひきもの職人の製作風景
(写真7)

それにしても、この挽きものの職人さんは大変な腕の持ち主で、写真のディテールを見ていただくと、キャップのかぶせの部分の厚さが薄いのにびっくりする。しかし一方で、これだけ薄いと壊れないかという不安がつきまとう。(写真8)

香筒のプロトタイプ
(写真8)

これでいけるか、と思われるモデルを検討していく中で、お線香はデリケートなものなので万が一にも旅行鞄の中で、蓋がとれてお線香がポキポキに折れて鞄の中に散乱するという危険を考えた。
これを回避するためには、ネジがよい。
香たての入るエンドキャップとお香を入れる本体を両ネジのユニットでつないでいる(写真9)。この両ネジユニットの素材を変えることがデザインのアクセントとしてチャームポイントにもなっている。

香筒の構造
(写真9)
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「香筒」の商品情報は、桜ショップオンラインにてご覧いただけます。

category香筒  time15:50  authorInoh Ippei 
株式会社古今研究所 代表取締役
稲生一平

アートディレクター、陶芸家
1942年生まれ。大手広告代理店に勤務後に独立。異色のプロデューサーとして活動。
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